2022/7/21

 

 (・・・)書くことおよび描くこと(grophein)の起源にあるのは、表象の正確さ以上に、負債ないしは贈与であるということである。より正確には、この表象の運動を命じ、従ってそれに先行する信仰の忠実(フィデリテ)さが、表象以上に重要であるということである。そして信仰はといえば、それはその固有の契機において盲目である。信仰は視覚を犠牲に捧げる、たとえ最後には見ることを目指してであれ。ここでは行為遂行的なものの自己上演がなされるのであり、それは見える対象である以上に、そこにあるもの、眼前に見分けたものの事実確認的な記述や描写である以上に、「視力を回復させ返済する」という行為の遂行なのである。

ジャック・デリダ『盲者の記憶』(鵜飼哲訳)37ページ